「税の作文」大阪府知事賞 受賞作文を紹介します

税の使い方    
 
石尾中学校  三年   川粼耀司
 
僕は北欧のフィンランドを訪れたことがあります。そこの街並や文化には驚かされました。しかし、僕が一番感銘を受けたのはそれらではありません。街にいるどの人とも、英語を通してコミュニケーションができることです。当時は母が英語を使っていましたが、誰に話しかけても、英語で返事が返ってきました。彼らの母国語は、フィンランド語とスウェーデン語です。日本では、大抵の人は日本語しか操れません。しかしフィンランドでは、母国語プラス英語を話せる人が大勢いるのです。
 この事実に驚いた僕は帰国後、なぜこんなことが可能になったのかを知りました。その要因の一つは、政府の教育に対する保障にありました。フィンランドでは、子どもが小学校に入学してから大学に至るまで、教育費や授業料等は無料なのです。他にも様々な理由がありますが、これが大きいでしょう。このような手厚い保障を支えているのが税金です。特に消費税においては、食品は十七パーセントで、たばこやお酒やガソリンなどはそれ以上の税率が定められています。しかし、そのお陰で無料で教育を受けられるので国民は不満に思っていないのです。
 七月の参議院選挙の前に、菅首相が消費税率の十パーセントへの引き上げについて発言しました。僕はこれに賛成です。けれども、それには条件があります。一つは、税の使い方を国民が知ることができる仕組みを整えることです。フィンランドでは、自分たちの支払った税が手厚い保障によって、どのように使われているのかが分かります。これは、税率引き上げへの重要なテーマです。
 もう一つは、それによって得た税を可能な限り教育に割り当ててほしいということです。十年、二十年後の日本を支えるのは僕等若い世代です。その若者たちを育成するのが教育です。有能な人材が多数出てくれば、日本を変革し新しい時代へと引っ張るエネ
ルギーとなります。教育への投資は未来の財産となります。これに対して社会保障は現在への投資であり、未来の財産になりません。もちろん、極めて重要な税の使い方です。しかし、こればかり重視していては、増え続ける高齢者の保障に追われ、不十分な環境で育った若者に国を引っ張るリーダーが現れず、また彼らが現状のまま高齢者となりその負担が増える、という悪循環が続いてしまいます。
 だから、消費税率引き上げを実現させ、教育にそのお金を使うべきです。フィンランドのような体制作りには、より多くの時間が必要です。これを成功させる鍵は、日本人の団結です。国家任せにせず、国民全員が自らの問題だと自覚し、この問題に取り組めば、希望が見えてきます。まずは、税の使い道を僕等にはっきりと示して下さい。それが教育を基にした新しい日本のスタートラインです。